ぶらぶらスポットを訪ねて
浅草橋ぶらぶらマップの紹介スポット「ぶらぶらスポット」を詳細に、浅草橋に古くから住む人などの取材を交えて、その歴史や秘話などを探索し、時には調査・研究する企画コラムです。浅草橋ぶらぶらマップと合わせてお楽しみください。
(B)おかず横丁
鳥越一丁目 MAP C3 D3 E3
鳥越本通りにある商店街の通称。惣菜、日用食料品店や飲食店が230メートルほどの通りに並んでいます。月に一度「ものづくり横丁」という名称でワークショップや実演販売などを行うイベントも 開催 しています。
~おかず横丁~ 2023年4月
おかず横丁はおかずだけではなかった!
浅草橋駅前の江戸通りから蔵前橋通りの鳥越神社を越えると、小脇を入ったところに『おかず横丁』があります。約230m続く一本道の左右にところ狭しとお店が並んでいます。お店の多くは、関東大震災後の復興で建てられたそうです。東京大空襲からも免れ、100年を越える歴史ある『おかず横丁』をぶらっと歩きます。
この通りは『鳥越本通り商盛会』通称『おかず横丁』と呼ばれています。戦後、町工場が多かったこのあたりで、仕事終わりに「ご飯だけあれば食事が完結する!」と、たくさんのおかずを買い揃えることができたことから名づけられたそうです。
趣のある建物からも、歴史が感じられます。
最盛期は100店舗ほどあり、おかずを求める人で賑わっていた商店街も、今では約1/3に……。シャッターが閉じられたままのお店やマンションも増えています。
お客さんとの会話を大切にしているまだまだ健在のお店もあります。
和菓子屋「港屋」さんは地元の銘店で、昭和6(1931)年から和菓子を販売しています。毎年夏には子どもたちで賑わうかき氷屋さんにもなります。今年もGWからかき氷がスタートしました。
平成20(2008)年にオープンした居酒屋「まめぞ」さん。テレビドラマ『孤独のグルメ』で取り上げられ、カツサンドが有名になりました。
下町ならではの風情が残る街並みは、テレビの撮影に使われることも多くあり、聖地巡礼として若者が訪れることも少なくないそうです。『#家族募集します』『みなと商事コインランドリー』などのテレビドラマの舞台にもなりました。
お惣菜屋「入船や水上商店」の3代目水上雄二郎さん。昭和10(1935)年から続いている老舗です。4月中旬から6月初旬の鳥越祭りの頃まで、新じゃがを使った肉じゃがが店頭に並ぶそうです。
季節のお惣菜を量り売りしてくれるのが魅力です。
おかず横丁の隠れたシンボル『カエル』。横丁の横丁にあるあたりがまた、謙虚で可愛い。ここに鎮座している理由や由来がわからないので、どなたかご存じでしたら教えてください。
(A)おかず横丁のカエル
鳥越一丁目 MAP C3
おかず横丁の脇道にマスコットのように愛されるカエルの像があります。グーグル地図では「蛙大明神」表記されている。ここにカエルが設置された経緯は謎だそうです。「ど根性ガエル」のロケでも商店街が使われました。
「鳥越本通り商盛会」会長の横山さんが営む「魚米(うおよね)」さん。創業は軽く100年を越えているそうです。
すぐに食べられる焼き魚の種類も豊富です。
新鮮なお刺身もあります。この撮影の合間に「まめぞ」のマスターがお買い物にきました。下町の横の繋がりも強いです。
商店街のなかでもひときわ目を引く可愛いお店がありました。くるみボタンの専門店「MiSuZuYa」さんです。店主の片岡清高さんと奥さまに取材をさせていただきました。
※この撮影の横では横山会長が「ヨッ! おしどり夫婦‼」と声をかけてくださり、おかげで素敵な笑顔。
今から16年前の平成19(2007)年にお父様からくるみボタン屋を受け継いだ片岡さん。
「妻にもよく話すんですけどね、ボタンが欲しくて歩いている人はいないんですよ。いかにパッと見て欲しい! と思ってもらえるかを工夫しています」と、ボタン業界の小売りの厳しさを教えてくれました。
「『モノマチ』への参加を始めてから横山会長の優しさに、たくさん支えられているんです」と片岡さん。毎秋おかず横丁では、『さんま祭り』が開催されていました。1000本を超えるさんまの塩焼きが無料で振る舞われるイベントです。(※近年コロナの影響で中止)大行列ができるこの場所を利用して「モノマチの宣伝をするといいよ!」と会長がアドバイスをしてくれたそうです。
※モノマチとは…古くから製造/卸の集積地としての歴史をもつ東京都台東区南部エリア(御徒町・蔵前・浅草橋にかけての2km四方の地域)を歩きながら、「町」と「モノづくり」の魅力に触れていただくイベント。
片岡さんたちモノづくり職人さんは、さんまに並ぶお客さんへモノマチのチラシを配り、その場で思い切ってボタンを売ってみたそうです。賑わう光景を見た会長は、「こういうイベントを月イチでもできたらいいんだよね」とポツリ。これがのちの『ものづくり横丁』に繋がりました。
※ものづくり横丁とは…ものづくりに関わるお店や企業がワークショップや販売などを行うイベント(現在コロナの影響で中止)
現在店舗のこの場所は、当初工業デザイナーさんが借りており、『ものづくり横丁』に共感してくださったことから「ここを一緒に使わないか?」と声をかけてくれ、出店のきっかけになりました。しかし通常、物件のシェアや又貸しは、大家さんが嫌がるのも当然。そこに『ものづくり横丁』に共感してくださった不動産屋さんが間に入り、大家さんと交渉をしてくれたそうです。一つの活動がこんなにたくさんの人を動かしていました。
紆余曲折あった中で、片岡さんは「自分がここを借りて、拠点を作れば、ものづくり横丁の時に気軽に活用してもらえるんじゃないか」という発想から、MiSuZuYaとして4年前(2019年)に実店舗を構えられました。
貸し出すイベントスペースとしてすぐにレイアウトを換えられるような工夫がたくさんあります。
壁のレールは取り外しやすく、格子の木枠もこのままごっそり取り外すことができます。
「ものづくり横丁」が人を繋ぎ、仲間を想い地域活性を願う片岡さん。そんな片岡さんや街の人の背中をいつも温かくひと押ししてくれる横山会長。皆さんの街への想いが連鎖しています。
片岡さんがデザインされたお店オリジナル刺繍のくるみボタン。
なんとその中に、知る人ぞ知る「おかず かずお」さんがブローチになっているではありませんか! この方は『おかず横丁チャンネル』のナビゲーターさんです。ジワリとくすぐられるシュールな「おかずかずお」さん、こちらも要チェックです!https://youtube.com/@user-wn7ln9uv5h
うっすら日も暮れて提灯が燈り始めました。昨年新調された提灯がまた粋な風景として広がります。
先ほどシャッターが閉まっていたこちらは、夕飯のお買い物に向けて開店しました。
お仕事帰りに一杯寄れるお店も。
看板後ろにあるシャッターが閉まった現在倉庫の場所を、この夏、お休み処にするそうです。おかず横丁の映像を流したり、スポーツ観戦したり、人が集える場所として開放するそうなので、こちらもお楽しみに!
まだまだお伝えできていないお店がいくつもあります。1軒1軒取材して回りたいところでしたが、それは記事よりも実際歩いていただくのが一番♪ お手元に「ぶらぶらマップ」を開いて、どうぞいらしてください。そして古き良き建物を眺め、お店の人との会話も楽しんでみてください。
『おかず横丁』には、新旧のお店が共存し、おかずだけではない下町商店街の魅力で溢れています。
2023年4月
取材・文/清水百恵
写真/鈴木静華
企画・編集/浅草みなみ観光連盟